「改正日本刑法論」という明治期の書籍の修復を行った。表装材の背表紙が背からはずれ、裏表紙とかろうじてつながっている状態だった。新しい革を土台として、元の背表紙を貼り付けることにした。また布装部分も傷みが激しかったので、新たなクロスに替えることにした。
修復前の表装材 背表紙の状態
本体の綴じは比較的しっかりとしていたが、最初の折丁にゆるみがみられた。前見返し、別丁トビラを外し、本体との間で糸綴じし、トビラを貼り戻した。寒冷紗を貼り、クータで背の補強をした。間紙は和紙に取り換えた。
折丁のゆるみ
間紙の取り替え
傷んだ布をすべて除去し、おもて表紙天の欠損部分を補った後、新しい製本クロスを貼った。表紙内側は見返しきき紙を10ミリほど持ち上げ、クロスの折り返し部分を貼った後、紙を戻した。
おもて表紙天の欠損部分
欠損部分の補修
表紙芯材の内側についていた3本の支持体を外し、芯材外側のノドに貼り付けた。
背表紙の土台となる新しい革を、裏表紙側のノド10ミリくらいに貼り付け持ち上げておいた革を戻し、背表紙までを新たな革に貼り付けた。次におもて表紙側ノドに新たな革の端を貼り付け、裏側と同様に持ち上げておいた革を貼り戻した。
支持体の元の貼り付け位置
おもて表紙ノド つなぎ前
元背表紙を土台革に貼り付け
表紙内側の作業に戻り、本体の背と背表紙を貼り付けた後、おもて・裏とも本体から続いている和紙を表紙ノドに貼り付け、その上に新たな製本クロスを貼り付けて、見返しきき紙のノド部分を貼り戻した。おもて・裏とも見返し遊び紙を貼り付けた。
革の補強として、HPC(繊維素溶剤)を塗布。
中性紙による保護ジャケット、(本体の重みを支える)土台付保存箱、書見台を作成。
本体からの和紙を表紙側に貼り付け前
ノドに新しいクロス貼り付け
作業終了後
研究に必要な、かつ内容的にも重要な本ということで、閲覧頻度の高さに対応できることを念頭に作業を進めました。
記録の公開にご快諾をいただきましたことを、ご依頼主に感謝いたします。
修復:平まどか