書物学 第31巻 「100年後も手に取れる本に!」
日比谷図書文化館「内田嘉吉文庫」の保存・修復・活用
勉誠社/2025年11月刊 B5判・並製 128 頁 2200円
ISBN:978-4-585-30731-0
工房メンバーが書いた記事が掲載されています。どうぞご覧ください。
日比谷図書文化館では修復報告展示も12月28日まで開催中です。
また、日比谷カレッジの講座では、『書物學』の記事にも出てくる文庫の一番古い本についての最新事情が拝聴できます。
特別研究室企画展示
100年後も手に取れる本に ~内田嘉吉文庫修復報告2025~
2025年10月21日(火)-12月28日(日)
資料を「活用しながら保存する」が特徴である特別研究室では2024年度、内田嘉吉文庫をはじめとする所蔵資料12点の修復を行いました。西洋人が日本について記し、挿絵も多い17世紀から19世紀に出版された本の改装や綴じ直し、日本統治期の台湾で発行され、合冊保存されていた雑誌の分冊化など書籍修復家による創意工夫を凝らした修復過程の記録を公開します。書籍修復家・近藤理恵氏が講師を務める東洋美術学校保存修復科の学生による修復本もあわせて展示します。
4階 特別研究室
日比谷図書文化館
東京都千代田区日比谷公園1-4
https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/information/20251021-100_2025_1/
内田嘉吉文庫の一冊 第3回
内田嘉吉文庫で一番古い本『世界の島々』について
2025年12月6日(土)14:00−15:30
講師:雪嶋宏一(早稲田大学名誉教授)
内田嘉吉文庫の中で一番古い本は、ヴェネツィアで16世紀に刊行されたベネデット・ボルドン『世界の島々』です。この本ではそれぞれの島の図に風向が示されていることから、航海図として描かれたものです。また、「日本」を木版画によって単独で図示した最初の本として以前から知られています。しかし、内田文庫本には出版年が印刷されていないため、出版の詳細はわかりませんでした。今回この本を調査して、出版事情についていくらかわかってきましたので、著者ボルドンおよび本書の成立事情、そして大航海時代における本書の意義についてお話しします。
お申し込み方法:イベント予約サイト「Peatix」 https://peatix.com/event/4572462/view
工房メンバーも出品いたします。是非ご覧ください。
2025年10月1日(水)-11月3日(月)
(10月20日休館 11月3日は16:00まで)
東京製本倶楽部が発行した『製本用語集 改訂新版』未綴じ本に登場する
製本、綴じ、装飾、技法、素材などを使ったルリユール作品を展示いたします。
さまざまなスタイルや表現をどうぞお楽しみください。
1階エントランス、3階・4階各エレベーターホール
日比谷図書文化館
東京都千代田区日比谷公園1-4
https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/hibiya/
主催:千代田区立日比谷図書文化館、東京製本倶楽部
工房メンバーも出品する展覧会のご案内です。
第12回東京製本倶楽部国際製本展「ルリユール、美術」
12 ème Exposition de Tokyo Bookbinding Club : Reliures, Arts
2025年9月2日(火)-9月7日(日)11:00-18:00
(2日は14:00から、7日は15:00まで)
京都市国際交流会館 姉妹都市コーナー・展示室』
〒606-8536 京都市左京区粟田口鳥居町2-1
https://www.kcif.or.jp/
主催:東京製本倶楽部
共催:(公財)京都市国際交流協会
◆ギャラリートーク
9月2日15:00〜、4日12:00~、14:00〜、7日13:00〜
(4日のツアーを2回に、7日の開催時間を変更しました)
◆製本ワークショップ「未綴じ本でルリユール」
9月6日(土)13:30-16:00
『製本用語集改訂新版』の未綴じ本を交差式ルリユールで仕立てます。
講師:藤井敬子
会場:京都市国際交流会館 第3会議室
参加費:4000円(当日お支払いください。『製本用語集』未綴じ本を含む)
定員:20名(先着順 中学生以上)
お申しこみ方法:お名前、電話番号を明記の上、以下のアドレスまでお申し込みください。
関西展実行委員会 event☆bookbinding.jp (☆を@に変更してください)
1911年パリで出版された美術史の本『INGRES SA VIE ET SON OEUVRE』
半革角革背バンド装で大きくて重い本。綴じつけ製本で背はホローバック。
表表紙が本体から外れている。背表紙革の傷みも進行している。
従来の製本構造を維持するために、外れた表紙をジョイント・タケティング法で本体に再接続した。丈夫な麻糸と和紙を使って綴じつけ製本の構造を復元した。
背表紙内側に残っていた元のクータを修理して再利用した。機能しなくなっていたホローバックが復元された。
表紙革の接合部を修復用の染色和紙で繋いで補強した。
新約聖書の修復
新約聖書改装のご依頼があった。ご依頼主が、祖父君が創立した学校へ入学された際に贈られた聖書ということで、最初のページに献辞があり、その献辞を残してほしいというのがご依頼主の一番のご要望だった。本文ページの綴じはほぼ問題なかったが、表紙の革がはがれ、背革が一部欠損していたので、別の山羊革で改装することにした。
表紙と見返し、背貼り紙、花切れを外した。少しゆるみのあった、献辞のある最初の折丁と最後の折丁に新たなギャルドブランシュ(2枚一折の保護白紙)を加え、本体に糸綴じした。布テープの支持体を3本使用。
背を軽めに丸味出し、寒冷紗貼り、傷んでいた元のしおりひもを新しいものに交換して、花ぎれを付けた後、クータ(チューブ状の紙)を背につけた。
表紙の下ごしらえとして厚紙でおもて・裏表紙の芯材をつないだ(カルカス)後に、表装材の革を準備。3色の候補から、ご依頼主にワインレッドの山羊革を選んでいただいた。
革漉き作業後、表紙貼りを行い、折り返した革との段差埋め立て(コンブラージュ)をして、見返しを貼り、本体作業を終了。

背タイトルを金箔押し。中性紙の保護ジャケットを作成した。
新たな表紙を得た聖書をお返しし、ご依頼主からは祖父君の懐かしい文字に再び出会えたと喜んでいただけました。
記録の公開にご快諾いただきましたことを、ご依頼主に感謝いたします。
修復、タイトル箔押し: 平まどか