2026年10月8日木曜日

『日本童話宝玉集』の修復

『日本童話宝玉集』という、大正13年に出版された児童書の修復、再製本を行った。お祖母様からお母さまへと引き継がれてきた、ご依頼主にとって、これからも大切にしていきたい本とのことで、修復のご依頼をいただいた。

破損状況としては、折丁のゆるみ、ページ多数の破れ、最初と最後の折丁の欠損、前後ろ見返し遊び紙の欠損、背表紙の一部欠損と表装材の欠損、おもて・裏表紙の傷みと表装材クロスの一部欠損、剥がれがあった。セロハンテープによる、ページ破れの旧修理後が多少あったが、変色はあるもののテープ自体はすでになく、べたつきもなかったので特別な処置は行わなかった。

最初の本文ページと前見返しきき紙

ページ修理前の一例

折丁をばらし、各ページをドライクリーニングした後、ページの破れを修理した(合計47折の3分の2ほど)。表紙芯材から見返しきき紙を外し、和紙で裏打ちをしてから、最初と最後の折丁に組み立てた。

最初の本文ページと見返しきき紙をつなぐ

ページ修理後

折丁の修復後、ギャルドブランシュを補い、本かがりで綴じ直した。
背固め、丸味出し、寒冷紗貼り、花切れ付け、クータ付けといった一連の作業を行い、裏打ちした紺の綿布を表総材に用いて、表紙貼りした。
見返し貼りの作業終了後、箔押ししたカーフ小片を、背タイトルとして貼り付けた。

本体と夫婦箱 

おもて表紙は多色刷りの布が貼られていたが、土台のボールから剥がれた部分も多かった。当初、ボールから表紙布を外し、新たな表紙芯材に貼り付けようと考えたが、布の表面が乾ききって、外そうとすると色が落ちてしまうので断念した。芯材の裏側に色紙を貼り、本とは別に保存することにした。

おもて表紙 修復前

修復後のおもて表紙と夫婦箱

元のおもて表紙と本体を共に保存する目的で、製本クロスを用いた夫婦箱を作成した。

夫婦箱 本とオリジナルおもて表紙の裏側


傷んだ本がよみえり、ご依頼主は「母に見せたい、孫にも伝えていきたい」と喜んでくださいました。記録の公開にご快諾いただきましたことを、ご依頼主に感謝いたします。
 
修復、製本、タイトル箔押し: 平まどか
 

2026年5月27日水曜日

本の骨格、綴じのカタチ。展

 工房メンバーの近藤と藤井の作品が並ぶ、九州での初めての展示です。



本の骨格、綴じのカタチ。ルリユールの実験:『製本用語集』をめぐる表現展

2026年6月9日(火)-6月14日(日) (10:00−13:15、14:00−18:00、最終日16:00まで)

未綴じ本で発行された『製本用語集 改訂新版』に登場する、製本、綴じ、装飾、技法、素材などを使ったルリユール作品を展示いたします

◆製本ワークショップ

「交差式ルリユールの本を仕立てる」
講師:馬頭洋子 徳永直子
①6月12日(金)14:00-17:00
②6月13日(土)14:00-17:00

ワークショップ申込フォーム:https://craft-bind-spot.base44.app/

SOJO GALLERY

〒860-0806
熊本県熊本市中央区花畑町 10-22 ダイワロイネットホテル熊本1F
TEL 096-288-0801

http://www.art.sojo-u.ac.jp/wp/gallery

主催:東京製本倶楽部 × 崇城大学芸術学部デザイン学科 

東京製本倶楽部 https://bookbinding.jp/
崇城大学芸術学部デザイン学科 https://www.sojo-u.ac.jp/faculty/arts/design/

2026年4月23日木曜日

葉山での展示


工房メンバーも出品する展示がゴールデンウィークに開催されます。

よろしければどうぞお出かけください。

Books are Beautiful. 本は美しい-印刷・製本と挿絵本の世界

 5月3日(日)-5月5日(火) 10:00-17:00(入場無料)

美しい製本と挿絵本の展示、講演、印刷、製本ワークショップ

会場:葉山町立図書館2階ホール(神奈川県三浦郡葉山町堀内1874)
主催:フェスティナレンテ葉山  https://www.instagram.com/festinalente.hayama/
協力:東京製本倶楽部  https://bookbinding.jp
後援:葉山町 葉山町教育委員会



#reliure
#bookbinding
#本は美しい


2026年1月26日月曜日

経済学研究資料の修復

「Statistical Survey of the County Cork」という研究書の修復を行った。

支持体の麻ひもが4本入っている半革装の綴付け製本だが、おもて・裏表紙が本体からはずれており、切断された支持体の影響で両端の折丁が外れる恐れがあった。新たな支持体を本体に固定し、ギャルドブランシュ(2枚一折の保護用紙)を綴付けた。背表紙は天地の一部が欠損していた。表装材は革のみを新しいものに替える方向でお預かりしたが、最終的に総革装くるみ製本に形を変えた。

 


修復前 表紙 

修復前 背表紙

新たな支持体を付け、ギャルドブランシュを固定

 

まずはページのクリーニング、図版の破れ部分の修復を行った。図版が7折に折りたたんであったが、その厚みが前後の紙を圧迫し表紙の閉じも悪くなるので、5折に折り直した。ページ破れ1か所と図版の破れを和紙で修理した。

 


図版旧修理テープ除去     

図版破れと旧テープ跡の修理

 

背表紙を外したところ、背の補強のための寒冷紗が貼られておらず、花ぎれを付けた背に直接革が貼り付けられていた。

107折という折丁数にもかかわらず、束(つか・本体の厚み)に対して背幅が極端に狭く、綴付け製本にふさわしい丸みがなかった。ギャルドブランシュ2折を加え、背固め、丸み出しを試みたが、綴付け製本にふさわしい厚み(丸み)は得られなかった。本来は元の製本形態の綴付け製本を維持すべきかもしれないが、以上の理由と、さらに研究資料として閲覧回数が多いと考えられたので、開きやすいくるみ製本が良いと判断し、総山羊革装のくるみ製本に改装した。

表紙内側の埋め立て

 

タイトルはご依頼主に確認した上で通称である“CORK SURVEY”とし、初版年1810も箔押しした。中性紙による保護ジャケット、(本体の重みを支える)土台付保存箱を作成した。

 


作業終了後      


見返し

 

 お預かりした資料の特徴を熟考することに時間をとられ、なかなか修復の方向が定まりませんでしたが、くるみ製本にすることで全体の姿形も含め、調和がとれたと思います。

記録の公開にご快諾をいただきましたことを、ご依頼主に感謝いたします。

 

修復・箔押し: 平まどか 

2025年11月3日月曜日

書物學 


書物学 第31巻 
「100年後も手に取れる本に!」

日比谷図書文化館「内田嘉吉文庫」の保存・修復・活用

勉誠社/2025年11月刊 B5判・並製 128 頁 2200円
ISBN:978-4-585-30731-0

工房メンバーが書いた記事が掲載されています。どうぞご覧ください。


日比谷図書文化館では
修復報告展示も12月28日まで開催中です。
また、日比谷カレッジの講座では、『書物學』の記事にも出てくる文庫の一番古い本についての最新事情が拝聴できます。



2025年11月1日土曜日

「内田嘉吉文庫修復報告2025」展


工房メンバーが担当した本が展示されています。どうぞご覧ください。

特別研究室企画展示 

100年後も手に取れる本に ~内田嘉吉文庫修復報告2025~

2025年10月21日(火)-12月28日(日)

資料を「活用しながら保存する」が特徴である特別研究室では2024年度、内田嘉吉文庫をはじめとする所蔵資料12点の修復を行いました。西洋人が日本について記し、挿絵も多い17世紀から19世紀に出版された本の改装や綴じ直し、日本統治期の台湾で発行され、合冊保存されていた雑誌の分冊化など書籍修復家による創意工夫を凝らした修復過程の記録を公開します。書籍修復家・近藤理恵氏が講師を務める東洋美術学校保存修復科の学生による修復本もあわせて展示します。

4階 特別研究室
日比谷図書文化館

東京都千代田区日比谷公園1-4 

https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/information/20251021-100_2025_1/



関連講座も開かれます。

内田嘉吉文庫の一冊 第3回

内田嘉吉文庫で一番古い本『世界の島々』について

2025年12月6日(土)14:00−15:30

講師:雪嶋宏一(早稲田大学名誉教授)

内田嘉吉文庫の中で一番古い本は、ヴェネツィアで16世紀に刊行されたベネデット・ボルドン『世界の島々』です。この本ではそれぞれの島の図に風向が示されていることから、航海図として描かれたものです。また、「日本」を木版画によって単独で図示した最初の本として以前から知られています。しかし、内田文庫本には出版年が印刷されていないため、出版の詳細はわかりませんでした。今回この本を調査して、出版事情についていくらかわかってきましたので、著者ボルドンおよび本書の成立事情、そして大航海時代における本書の意義についてお話しします。

お申し込み方法:イベント予約サイト「Peatix」 https://peatix.com/event/4572462/view



2025年9月13日土曜日

日比谷でルリユール「製本スタイル」

工房メンバーも出品いたします。是非ご覧ください。


日比谷でルリユール「製本スタイル」展             

2025年10月1日(水)-11月3日(月)

(10月20日休館 11月3日は16:00まで)

東京製本倶楽部が発行した『製本用語集 改訂新版』未綴じ本に登場する
製本、綴じ、装飾、技法、素材などを使ったルリユール作品を展示いたします。
さまざまなスタイルや表現をどうぞお楽しみください。

1階エントランス、3階・4階各エレベーターホール

日比谷図書文化館

東京都千代田区日比谷公園1-4 

https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/hibiya/

主催:千代田区立日比谷図書文化館、東京製本倶楽部