2019年8月17日土曜日

背革に欠損のある洋書の修復

“SCRAMBLES AMONGST THE ALPS IN THE YEARS 1860-69”という書名の1871年初版の洋書の修復依頼をいただいた。ご依頼主はかつて山行を趣味とされていた方で、山岳に関する書籍を集めておられるという。背革の一部欠損、おもて・裏表紙のはずれを修復し、見返しも他の装飾紙に替えることがご希望だった。


 背の外れ
 背の一部欠損


当初、背革のみ新しい革に替えるつもりだったが、平の革も傷みがあり、金線を残し、革全体を替えることを提案、ご依頼主から承諾をいただいた。見返しはオリジナルが主張が少ない模様と色のマーブル紙だったが、同様のものが見つからず、ドイツの糊染め紙に置き換えることを提案した。

 背の代替作業
オリジナル見返し

まずはオリジナルの見返しをはずし、前回担当した洋書同様、綴じの支持体を新しく追加し、これで平の表紙をつなげた。新しい革を貼り、新たな見返しを貼った。図版ページのノドや折り返しの部分に破損が多く、これを薄手和紙で繕い、扉の前の図版ページの合紙を和紙に取り替えた。中性紙による保護ジャケットと、本体の重みを支える台座付きの保存箱を作成した。



ご依頼主からは、「修理前のイメージを残しながら、今後も長く保存可能な修理をしていただき感謝しています」というお言葉をいただきました。
記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に、感謝いたします。

修復・記録:平まどか  タイトル押し:近藤理恵

2019年7月17日水曜日

修復報告2019展示

工房メンバー(岡本、近藤、藤井)の修復した本が展示されています。
写真は、藤井の担当した『父』の本とケース。ケースには本文サポートの台をつけ、出し入れのときに摺れて痛みやすいので、中性紙で保護ジャケットも作りました。

 
内田誠著『父』

100年後も手に取れる本に〜内田嘉吉文庫修復報告2019
2019716日(火)−930日(月)
2018年度、日比谷図書文化館特別研究室では内田嘉吉文庫所蔵資料計16点の修復を行いました。そこで、修復報告の一環として、修復を終えた資料とその作業記録を公開します。
今回は大型の洋書や和本、絵図など、修復した資料のジャンルがこれまで以上に多岐にわたっています。活用しながら保存するためにどのような修復が必要か、実物と修復作業の記録パネルでご覧ください。

日比谷図書文化館 4階 特別研究室

2019年6月28日金曜日

学術書の修復-II


国立感染症研究所所有の和文の学術論文集「第三回 第四回 癩學會發表論文」を «LEPRABIBLIOTHECA INTERNATIONALISVol. I »とともに、仲介していただいた会社を通して、お預かりした。修復すべき箇所は、表装材の劣化による破れ、切断、見返しも同様に劣化による破れ、本文の最初に綴じ込んである図版の間紙の破れ。ステープル綴じによる錆がでているので、綴じ直しをすることにした。


まず、おもて・裏の表装材をはずした。背表紙を先にはずそうとすると、劣化のため粉々に割れるおそれがあるので、背はそのままにさびたステープルを切断してページを一枚づつはずしていった。

背表紙をそのままにして、ページを一枚づつはずす

ステープル綴じの穴を利用して、製本用麻糸で綴じ直した。おもて・背・裏表紙を裏打ちしてつなげ、破れて傷みが激しかった見返しを除去、おもて表紙と裏表紙の内側に見返しを新たにつけた。


麻糸で平抜き綴じ
表紙のつなぎ
図版に保護用の間紙を付け、本体と表紙を背とのどの部分で糊付けした。


中性紙による保護ジャケットを作成した。

修復・記録:平まどか

記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に、感謝いたします。