2020年11月3日火曜日

半革装の修復・製本

『THE CAPITAL OF THE TYLOON』2巻本の修復・製本記録です。

『THE CAPITAL OF THE TYLOON』Vol.I&Vol.Ⅱ
A NARRATIVE OF A THREE YEARS RESIDENCE IN JAPAN.
By SIR RUTHERFORD ALCOCK 1863, LONDON


2巻はどちらも綴じつけ製本、三方小口マーブルが施されたマーブル紙のコーネル装。
状態は、背と平の接続部分、支持体も一部切れていて、背革に剥がれた部分もあり、革も劣化しています。本全体にフィルムが貼られています。
ご依頼主のご希望で、革、マーブル紙を取り替えて改装することにいたしました。

作業は表紙、見返しマーブル紙を外し、背貼りなどを外して本文のクリーニングや補修。
2巻目は本文上部に破れている箇所があるので薄口の楮和紙で補修しています。


本文の綴じは大丈夫ですが、支持体が切れているので麻紐を加えて補強、ノド革を貼り込むため、折丁を糸で綴じ込んだ上で中性ボードで表紙を作り綴じつけます。
背に和紙、寒冷紗を貼り、元は貼り花ぎれだったので、色和紙に赤と金色の絹糸で花ぎれを編み、天地に貼りつけました。背貼り紙を貼った後に擬似背バンドを革で作ります。


表紙革を貼り、マーブル紙との厚み調整の紙を貼ってからマーブル紙を貼りました。
原装の模様とは方向が違うのですが、マーブル紙の紙の目に従って見返し紙をつけました。


見返しをつけて、箔押し前の状態
花ぎれとコワフ

本文が下がらないようにサポートをつけたソフトケースを制作。



綴じつけ製本 擬似背バンドつきコーネル装
サイズ:219×151×38mm、219×153×42mm
山羊革、水牛革、マーブル紙(イタリア製中性紙)

ご依頼主からは「ロンドンの街を歩きながら本屋に立ち寄ってこの本を手に入れた気分になりました。」とのご感想をいただきとてもほっといたしました。
記録の掲載をご快諾いただきありがとうございました。

修復・製本・記録:藤井敬子   箔押し:近藤理恵

2020年10月3日土曜日

展示と講演会


工房のメンバー(岡本、近藤、藤井)が修復をした本が展示されます。

特別研究室企画展示

100年後も手に取れる本に内田嘉吉文庫修復報告2020−

2020年10月20日-12月28日

平日10:00-20:00  土曜-18:00  日・祝-16:00

2019年度、日比谷図書文化館特別研究室では内田嘉吉文庫をはじめとする特別研究室所蔵資料計15点の修復を行いました。そこで、修復報告の一環として、修復を終えた資料とその作業記録を公開します。
今回は糸綴じのみならず、針金綴じ、釘綴じの資料の修復も行われ、材料や技法の創意工夫により、安心して手に取ることができるようになりました。活用と保存の両立のためにはどのような修復が必要か、実物と修復作業の記録パネルでご覧ください。

日比谷図書文化館 4階 特別研究室


日比谷カレッジ

産業化された製本の修復-針金綴じと釘綴じについて-

講師:岡本幸治

2020年11月29日(日曜日)

14:00-15:30

定員:60名 参加費:1000円

申し込み:ホームページ申し込みフォーム

2019年度に修復をした特別研究室の蔵書の中に針金や釘で綴じられている本がありました。針金綴じや釘綴じは製本が産業化される中で生み出された技術ですが、今回修復した本の針金や釘は腐食が進み、修復には大変手間がかかる状態でした。この修復を行った講師に修復の過程をお話しいただくとともに、針金綴じや釘綴じはどのように製本に用いられてきたのか、その利点と欠点、耐久性における糸綴じの本との比較などから、針金綴じや釘綴じの本を長く活用するための扱い方についても考察します。

日比谷図書文化館 地下1階日比谷コンベンションホール(大ホール)

日比谷図書文化館
東京都千代田区日比谷公園1-4
TEL 03-3502-3340(代表)
https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/hibiya/