2019年10月18日金曜日

大正14年刊の聖書の修復

大正14年刊の聖書の修復


本文ページの外れや、表紙の破れなどがあり、過去に本文紙、見返し、表紙にセローテープを貼って直して大事に使っていたものと思われます。現状は、テープの粘着成分が紙に染み込み変色しており、またページも一部開きにくくなっていました。
依頼主様と相談の上、元の素材を可能な限り残したうえ、必要に応じて保存に耐える補強をする方針で修復を行いました。

書誌:新約聖書    
出版社:米國聖書協會  出版年:大正14
判型:129×101×23     ページ数:p.561 + p.159(詩篇/舊約聖書)
製本仕様:ソフトカバー黒クロス装、丸背糸綴じ、表紙角丸、
貼り見返し/黄色、花ぎれ無し

保存状態
中身:セロテープによる修理跡あり、粘着成分が本文紙に染み込んで変色している。
中身の前後に外れたページがあり、周辺部に小さな破れや折れがある。
表紙:表紙肩に破れあり、セロテープで留めている。クロスの周辺折り返し部分に破れあり。背クロスの一部に穴が開き、中身に侵食。裏表紙の芯紙に折れ。


修復前の表紙(中身から外したところ)と、テープの侵食と外れのある中身


作業内容

中身の修理/綴じの緩みがあったりセロテープで留めている折丁を外し、テープは全て取り除き和紙で補修。本文の破れや色見返しも和紙で補修する。

外した折丁を綴じ直し、背を補強しクータをつける。
表紙の修理/クロスを外し、破れや欠損部を修理。折れのある芯紙は新規に入れ替える。
組み立て後、表紙全体にセルロース糊アルコール溶液を塗布。保存函の制作。

  
和紙で補修した折丁を閉じ直す

 修復後


使用材料 
楮和紙、色和紙黒、黒キャラコ布、麻糸、セルローステープ、寒冷紗、中性紙、和紙糊、正麩糊、KluselGアルコール溶液、中性ボード

修復・記録:近藤理恵

記録の公開をご承諾いただきましたご依頼主に感謝いたします。