1924年発行のアルバムの修復をした。依頼主ご自身が修復家で、元々のご依頼主から修復依頼があったとのこと。本文写真が印刷された本文紙の修復をされた上で、表紙の布装の傷みを直し、製本し直してほしいというご依頼が本の修復工房にあった。
欠損箇所の修復後、蝶番部分の布の浮きを直すため、表紙内側から糊入れをした。その上で、裏側の蝶番部分には表紙と同じ色合いに染めた厚手の和紙を補強として貼りこんだ。紐を通すハトメは一部錆がでていたので、すべて新しいものに交換した。
1924年発行のアルバムの修復をした。依頼主ご自身が修復家で、元々のご依頼主から修復依頼があったとのこと。本文写真が印刷された本文紙の修復をされた上で、表紙の布装の傷みを直し、製本し直してほしいというご依頼が本の修復工房にあった。
114年前に刊行された夏目漱石著『鶉籠』は橋口五葉の装幀。
淡い裏柳色に花紋様と描き文字が空押しされた紙装です。
作業は、本文に湿気臭さがあったので、晴天の日に曝涼を試みてからクリーニングをしました。見返しのノド側をはずして、本文と分離し、背の膠をできるだけとってから、折丁に分解しました。
この本も抜き綴じで、綴じ穴の切れ目が深く、ノド側で本文紙が折れたりしています。
背の掃除をしてから、和紙で各折丁を補修します。
補修を終えた本文に、元の綴じ穴を活かして3本の麻紐を渡し、細い麻糸150番で本かがりで綴じました。背に和紙を貼り、和紙のクータをつけて本文を整えます。
本体と、表紙を接続して、見返しを貼り戻して仕上げました。
布装のシェルケースを作成、背文字をフロッタージュして作成した原稿を、デジタル加工してタイトルとしました。
古書を解体すると、先人の手作業の痕跡をたくさん見るのですが、参考になることも、疑問に思うこともあり、綴じ穴の切れ目の深さもその一つでした。
数多く発行された中の一点ですが、この本は依頼主のご希望で修復したことによって、新たな来歴を持つことになりました。修復がこの本の寿命を少しでも延ばすことになっていれば良いなと願っています。
記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に感謝申し上げます。
修復・記録:藤井敬子
1636年に出版された植物画の本の修復をしました。
白い見返しは、再製本時に新たにつけられたもので、表側も裏側もノドが切れていました。遊び紙の前小口は本文より少し長かったので、折れや破れがそのあたりに集中していました。本文紙は、最初と最後の数枚には小口に傷みがあり、補修が必要と思われました。それ以外では、後ろの方の数十ページの前小口に、インクをこぼしたような黒い染みが付いていました。
綴じは、麻紐5本を支持体とした本綴じで、おもて表紙のノド以外では切断箇所は見当たりませんでした。その他には、えんじ色と黄色と白の糸で編まれた丈の高い花ぎれが、天地ともにきれいに残って付いていました。
作業は、まず、両見返しの遊び紙と本文紙数枚の小口の補修から始めました。インク染みの部分については、初めはページの片面に和紙を貼って補強することを考えましたが、インクの成分など不明なことも多く、幸い、文字にはかかっていなかったために、このままでも今までのような利用は可能と考えました。それなので、大半のページには手を触れず、明らかに大きめの破れがあったところだけ補修することにしました。
次に、背表紙を本文背から剥がして、うら表紙からも切り離しました。本文背があらわになったところで、本文背の膠と古い背貼りを除去しました。
それから、編み花ぎれが外れてしまわないように和紙を貼って固定し、切れていた支持体に新規の麻紐を繋ぎ直しました。 和紙でまとめの背貼りをし、自分で裏打ちをした麻ダックをヒンジの背貼りとして貼りました。
この本はとても丁寧に作られていて、表紙うらがノドまできれいにフラットになっていました。作業するために触っているうちに、本文と表紙の接合のためにそこを持ち上げたり、新たに何かを貼り付けたりするのが忍びなくなってしまいました。それで、表紙のノドの厚み部分を割り裂いて、そこへ支持体とヒンジの背貼りのハネを押し込んで、本文と表紙を接合しました。
その後、本の開きを良くするためのホローチューブを和紙で作って本文背に貼り、さらに背の芯紙を貼りました。
この本の表装材はシボのある革でしたが、同じような色や風合いの革が調達できず、手持ちのシボのない修復用の革で代用することにして、その新しい背革で表装し直しました。それから、元の背表紙の裏側の古い芯紙を削り落として薄く整え、新しい背革の上に貼り戻しました。今回は、天地のコワフ部分にも金線の箔押しがあったので、そこも、元革の裏を薄く整えて新しいコワフの上に貼り戻しました。そして最後に、表紙全体に保革油を薄く延ばして磨きました。
修復・記録:安藤喜久代
記録の公開をご承諾いただきましたご依頼主に感謝いたします。
夏目漱石著『虞美人艸』の修復記録です。
113年前、明治41年に刊行された『虞美人艸』、橋口五葉装幀の表紙は石版、木版の紙装。
時を経て、背や小口、接続部分などが擦れてモチーフの花も掠れているところがあります。
本文の綴じに緩み、折れたり、破れがあるページもあり、表紙との接続が外れかけています。後ろ見返しは署名を隠すためか、遊び紙を貼り合わせてありました。
帙は、折り目部分の外側がほぼ切れている状態で、内側の和紙で繋がっている状態でした。
折丁の破れなどを和紙で補修し、新たな見返し紙に半葉の紙を加えて折丁を整え、元の穴を活かして3本の支持体を通し、細い麻糸で本かがりで綴じました。
背固めをして和紙を貼り、寒冷紗、クータを付けて、本体を整えます。
表紙の背の内側に残っている膠を除去し、楮和紙で補強、欠損部分は色和紙で補修しました。
表紙の擦れて薄くなっている部分などは補彩ではなく、手染めした楮和紙や染め典具帖和紙で補修しています。
本文と表紙の背を接続し、半葉の紙で段差を埋めてから見返し用紙を貼り、仕上げました。
帙の内側の和紙とクロスを外し、ジョイント部分を楮和紙で補強、表側の切れている接続部を色和紙と染め典具帖和紙で補修しました。