昭和十二年発行の半革装の日記を修復した。
革と地紋のある布を表装材とした上製本で、布テープ綴じの本かがりという西欧由来の製本。背革の傷みや変色が激しく、一部は本体からはずれていた。
見返しのノドに若干のゆるみがあったものの、綴じは全体としてしっかりしていた。
表装材の革部分のみを新しいものに替える方法と、背に貼った新しい革の上に元の革を戻す方法の二つを提案し、依頼主のご希望により後者の作業を行った。
修復後
背に残っている革をはずした。当初、クータ(チューブ状にした紙)を背に貼り、ホローバック(本の開閉時に柔軟に動く背の形態)にするつもりだったが、背表紙の動きにより脆弱な元の革がはがれるのを避けるため、タイトバック(本体と表紙の背がくっついている固い背の形態)に変更。背の補強として紙を貼った。新たな革を切り出し、おもて・裏表紙双方のノドの下に入れ込むようにして、背に貼り込んだ。
新たな革の表紙ノドへの差し込み
見返しと本文紙との間のゆるみを和紙で補修。
平の革の傷んだ部分の修理として、最も傷んでいたおもて表紙の地の角には新たな革を貼った。他の部分は、薄く漉いた革を貼り、あるいは皮革用染料で着色した。
元の背革を、新たな革の上に貼り戻した。元の革の傷みが激しく、ちょっとしたこすれで崩れていく状態だったので、中性紙による保護ジャケットを作成した。
ご依頼主からは、古い背表紙を極力残しながらも違和感なく仕上げていただいた、とのお言葉を頂戴しました。記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に、感謝いたします。
修復:平まどか
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