2021年8月11日水曜日

国語辞典の修復

国語辞典の修復


昭和三十五年発行の国語辞典の修復をした。ご依頼主は大学生の若い方で、国語辞典は、先年亡くなられたおじい様の形見という。表紙が傷み、中身がばらばらになっているので、手に取れる状態に戻したいとのご希望だった。表装材の革はかなり傷んでいたが、土台から取り外しが可能と思われたので、新しい製本クロスの表装材の上にオリジナル表紙を戻す方法と、新たな革装本に仕立て直す方法を提示し、前者の修復を行うことになった。


修復前 表紙


修復前 折丁分離  

表紙を取り外し、折丁のばらし(解体)を行った。表紙内側についている見返しページを取り外し、傷んだ部分の修復をした。折丁のどを必要に応じて補修後、見返しを含め、本かがり(支持体を使用)で綴じ直し、背固め、丸見出し、寒冷紗貼り、花切れ付け、クータ(チューブ状にした紙)貼り等、背に対する一連の作業を行った。

綴じ直し、背固め、丸見出し後  
前見返し 
前見返し修復後

製本用クロスを表紙用台紙に貼った後、本体と表紙を合体させた。オリジナル表紙の台紙が見える部分を取り除き、新たな表紙の上に貼り付けた。オリジナル表紙の革劣化による亀裂(薄茶色の土台が見えている部分)をアクリル絵の具で色修正、中性紙による保護ジャケットと保存箱を作成した。

色修正前  

修復後 色修正後 


ご依頼主からは、「実家でバラバラになってしまった辞書を見つけた時はとても悲しく落ち込みましたが、修復された辞書を見て、また祖父との楽しかった思い出を思い出しました。」というお言葉をいただきました。記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に感謝いたします。

修復・記録:平まどか