大型古版本の修復 - ジョイント・タケティング
西洋古版本を扱う古書店のご店主より、大型本の修復依頼があった。三巻本のうちの一冊で、おもて側の表紙が本体からはずれていた。背革全体を外せるのであれば、支持体となる新たな麻ひもを本体の背に綴じ付け、その麻ひもを表紙の芯材に通して連結するという作業ができるが、今回は背の革が特に傷んでおり、全面的に外すことができないことから、ジョイント・タケティング(Joint Tacketing)という別の方法で修復することにした。
ジョイント・タケティングは、表紙の芯材と本体に小さな穴をあけ、太めの麻綴じ糸を通すことで連結する方法。背の革は一部を持ち上げるものの、全体を外す必要がない。
最初に見返し遊び紙を本体からはずし、裏側から補強の和紙を貼った上、傷んだ部分を修理した。本体の耳の部分に補強用の厚手和紙を貼った上で、ピンバイスというドリルを使って、背に向かって穴をあけた。本体の方は背の革を15ミリほど持ち上げておいた。表紙内側の見返しきき紙を15ミリほど持ち上げ、ピンバイスを使って、芯材の厚みの方から斜めに穴をあけた。8か所に穴あけをし、本体と表紙芯材に麻糸を通し連結した。芯材の上で糸を固定したのち、本体耳部分に貼っておいた和紙の余分を芯材側に糊付けし、連結の補強とした。
外しておいた見返し遊び紙を耳に貼り直し、和紙の足を芯材の上に補強として貼ったのち、持ち上げておいた見返しきき紙を元に戻した。おもて側は、表紙ノドの革も10ミリ程度持ち上げ、背革の持ち上げた部分に亘るように新たな革を貼りつけた後、持ち上げておいた革を元に戻した。裏表紙側も、同様の修復を施した。
表紙の四つの角が共に欠損していたので、新たな革で埋めた。
革は既に傷みが激しかったが、補強としてセルロース溶剤のHPC(ヒドルプロピルセルロース)を塗布した。
中性紙による保護ジャケット、本の開閉時にかかるノドのストレスを軽減する目的で、中性紙段ボールによる書見台を作成した。
記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に感謝いたします。
0 件のコメント:
コメントを投稿