2024年7月18日木曜日

背が固すぎると本がこわれやすい



修復前 背表紙が取れそう

資料名:NIPPON.Archiv zur beschreibung von JAPAN
            ERSTER BAND.
著者名:Fr. von Siebold.
出版年、出版地:1897年 ビュルツブルグ ライプチヒ
製本仕様:くるみ製本、半革角革背バンド装。表紙は白色の擬革紙。
270×190×厚さ65mm。2巻本の1冊。個人蔵

修復前の状態

第1巻の背表紙が本体から分離しかけていた。背表紙天側末端のコワフが破損し、部分的に欠損していた。背表紙が背タイトルの下側付近で2つに破損分離していた。

作業内容

見積もりのために送っていただいた画像を見て、本が「針金綴じ」されている可能性に気が付いた。「針金綴じ」が錆びてしまうと、大がかりな修復になる。所蔵者の方に、見積前に実物を観察させていただくようお願いした。思った通りの「針金綴じ」だったが保存状態が良好なので、今回は背表紙の傷みの修理に限定することになった。

 背表紙の破損の原因は芯紙に柔軟性がなく丈夫すぎて突っ張って、本を開くことによる負荷が背表紙のおもて・うら両側のジョイントに集中したことによる、と考えた。


分離した背表紙

表紙の裏側を薄くする

傷んだ材料を取り替える、傷んだ部分を補強する、丈夫すぎる背を薄くして柔軟性を持たせる。本の開きによる負荷を分散して開き機能を構造的にサポートして、本を安全に読むことができる。本の背に和紙を貼り、その上から筒状の紙(クータ)を貼り、背表紙芯紙、薄くした元の背表紙革の順に張り戻した。クータを導入することで、本を開く際の構造的負荷を分散することが出来る。欠損部や破断部などは染色和紙で補強、修復した。背表紙は柔軟性を回復した。


背表紙を戻す


柔軟な背表紙

担当:岡本幸治(2024年7月)

2024年7月12日金曜日

修復報告展2024

工房メンバーが携わった修復の展示が開催されます。




特別研究室企画展示 
「100年後も手に取れる本に ~内田嘉吉文庫修復報告2024~」
2024年7月16日(火)-9月30日(月)
平日 10:00−20:00/土曜 10:00−18:00/日曜・祝日 10:00−16:00

資料を「活用しながら保存する」が特徴である特別研究室では、2023年度、内田嘉吉文庫をはじめとする所蔵資料7点の修復を行いました。破れた折りたたみ地図の補修など一般的な修復の他、透明フィルムが剝がれかけた洋書の表紙の改装や合冊された明治期の雑誌の分冊化など書籍修復家による創意工夫を凝らした修復過程の記録を公開します。書籍修復家・近藤理恵氏が講師を務める東洋美術学校保存修復科の学生による修復本もあわせて展示します。

4階 特別研究室
日比谷図書文化館
東京都千代田区日比谷公園1-4


内田嘉吉文庫関連の講座も開かれます。

内田嘉吉文庫の一冊 第2回
「海を渡った江戸紫のブックデザイン」
2024年9月28日(土)14:00−15:30
講師:野村悠里 (東京大学大学院 人文社会系研究科文化資源学研究専攻准教授)
会場:4階 スタジオプラス(小ホール)

詳細は図書館HPをご覧ください。
申し込み方法:日比谷図書文化館HPの申し込みフォームから