ミルトン著 ドレ挿画 『失楽園』の修復
19世紀末にニューヨークで出版された縦34㎝×横27㎝×厚さ約4㎝の大きな本である。
外観上に大きな傷みが見当たりませんでしたが、ご依頼は「表紙・背が本体から外れそうになっているので修理をお願いしたい」というものでした。大切にされているご蔵書の「修復」というよりは今後に予想される傷みへの「予防的な手当て」を希望されていると理解いたしました。
外観上に大きな傷みが見当たりませんでしたが、ご依頼は「表紙・背が本体から外れそうになっているので修理をお願いしたい」というものでした。大切にされているご蔵書の「修復」というよりは今後に予想される傷みへの「予防的な手当て」を希望されていると理解いたしました。
『失楽園』の製本は総クロス装の版元くるみ製本です。表紙には金版による型押し装飾が施されています。子細に観察すると、表紙ノドや背表紙の天地末端及び表紙角で表装材クロスの傷みが起きています。見返しは白い紙ですが変色していてシミが多く発生していました。この機会に見返しをマーブル紙に取り替えたいとのご希望があり、サンプル5種の中から選んでいただきました。タイトルページと口絵との間の薄葉紙も取り換えのご希望がありました。そのほかに綴じがゆるんでいて外れかけている折丁がありました。
表紙と中身とを分離しました。タイトルページの薄葉紙を薄様の和紙に取り替えました。背貼り紙を取り除くと麻ひもの支持体3本を使った綴じであることが分かりました。中身の背を固めていた接着剤のニカワと寒冷紗を除去して、傷んでいた綴じ支持体を補強しました。見返し用紙のマーブル紙を和紙とデンプン糊で中身に接続して、背に寒冷紗と和紙クータを貼りました。
背表紙末端を麻線維と染色和紙で補強
傷みやすい背表紙末端の折り返し部に麻の繊維を挿入して補強しました。表装材クロスの傷んでいた部分を染色した和紙で修理して、表紙と中身とを元に戻しました。マーブル紙の見返しを貼って終了しました。今回の作業で、表紙・背と本体がしっかり接続されて安心して本を開くことが出来るようになったと思います。
修復・記録:岡本幸治
記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に感謝いたします。
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