2019年6月28日金曜日

学術書の修復-I

ある国立の資料館からの依頼で、1900年にLeipzigで刊行された«LEPRABIBLIOTHECA INTERNATIONALISVol. I »という学術書の修復を行った。ドイツ語、英語、フランス語による学術論文集で、最後に図版の折丁が一折綴じてある。製本形態は、麻ひもの支持体を用いた本かがりで、クロスとマーブル紙を表装材としたコーネル装(角革装)。背と平(ひら)をつなぐノドのクロスが切断状態で、背表紙がはずれかかっており、図版の足の用紙劣化により図版ページのはずれがあった。


 背表紙の傷み
図版はずれ

まず、図版ページの修復を行った。折丁の真ん中は綴じの要となる部分なので、足の用紙をはずさず、上から和紙で補強した。すでにはずれているページやはずれそうなページから足の用紙を除去、和紙でページ間をつないだ。その上で、図版ページとその前の印刷本文の折丁をリンクステッチで綴じ、かがりの補強を行った。

 図版のつなぎ
図版の綴じの補強  
表装材のクロスと同色の布を裏打ち、厚めの洋紙で土台を作った。背表紙をはずし、おもて・裏表紙のノドの表装材を持ち上げ、紙の土台に付けた布を貼った。その上に、オリジナルの背表紙を戻し、糊付けした。


中性紙による保護ジャケットを作成した。

修復・記録:平まどか

記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に、感謝いたします。


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