中型の大きさ(縦240ミリ、横幅180ミリ、厚み50ミリ)の聖書を修復した。表装材のノドの部分に破れがあり、角などはこすれて傷みがあった。また、本文ページの一部にしわ折れ、欠損が見受けられた。ご依頼主のご希望は、表装材を革に替え、背タイトルだけでなく、金箔による装飾を付けるというもの。装飾をどのようにするかについては、革装への変更が終わった段階で考えることとし、作業に着手した。
背の変形があるものの、綴じは全体としてしっかりしているので、綴じ直しはせずに、外れてしまっている前後の折丁のみ本体に綴じ付けるつもりだった。表装材をはずし、背貼り紙や寒冷紗を除去した上で、にかわによる背固めをして、丸み出しをし直せばよいと当初は考えていたが、背に付いている接着剤が強力で背貼り紙除去が困難なことから、むしろ解体して綴じ直す方が技術的にも時間的にも容易と判断し、作業工程を変更した。
本体をばらした後、外れていた前後の折丁のしわ伸ばしや欠損部分の和紙の補いなどをして、一連の綴じの工程を行った。背固め、丸み出しののち、補強の寒冷紗貼り、新たな栞ひも2本と革による花ぎれを装着した。背表紙部分の芯材に、背バンド用の幅のせまい革を貼った。革漉きによる厚み調整をした革で表紙貼りをして、見返しを内側に糊付けし、製本作業を終えた。
装飾は華美にしない方が聖書にふさわしいということになり、「聖書」と金箔押しした背バンド間のみ金線を入れた。
中性紙による保護ジャケットと本の重さを支えるための土台付保存箱を作成した。
聖書や辞書のようなページ数が多い書籍に使われる薄い紙(インディアン紙)が、今回も用いられており、かつ大き目の判型で重量もあったことから、再製本作業が予想以上に手間取りましたが、ご依頼主からは「素晴らしい出来栄えに感嘆しております」というお言葉をいただくことができました。 記録の公開をご快諾いただきましたご依頼主に、感謝いたします。
修復、製本: 平まどか タイトル押し、金線装飾: 近藤理恵
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