『カレワラ』の修復
フィンランドの叙事詩「カレワラ」の修復を行った。「フィンランド國出版費補助豪華版」限定版150部という大型の半革装本で、猪熊弦一郎の挿画が入っている。ご依頼主のご親戚が翻訳を手がけたとのこと。
背表紙はごく一部を残し欠損、背貼り紙が残っているのみで、背表紙とおもて表紙をつなぐノドは分離、背表紙と裏表紙にかけてテープが貼りつけてあった。前見返のノドにゆるみが見られた。
献呈署名のある前見返し遊び紙は残し、おもて・裏とも新たな見返しに替えた。また、表装材のバクラム(製本クロスの一種)は残し、革は新しいものに替えた。
おもて見返しのきき紙の一部と献呈署名のある遊び紙を保存。おもて・裏見返しのその他の部分を本体から外した。新たな見返し(2枚一折)を本体に糸で綴じ付け。膠で背固めし、新たな寒冷紗を貼った。表装材と同じ革で花ぎれ付け。
カルカス(おもて・裏表紙をつなぐための厚紙)を作成し、元の表紙芯材と貼りつけ。新たな革を切り出し、革漉き。バクラムの部分を残し、背と平(ひら)のノド側部分、角革の表紙貼り。新たな見返しのきき紙を表紙内側に貼りつけ、本体作業完了。
一旦、箔押し作業に出し、戻ってきた本のスリップケースを作成した。元の箱から外題と背タイトルの印刷部分を取り外し、補強として裏打ちした。本体の重みを支える土台を作成、箱の内側下方に貼りつけた。ケースの組み立て後、出し入れ口に革を貼り、強制紙(耐久性のある厚手和紙)で表装、元の外題と背タイトルを貼りつけた。
傷んだ革を新しいものに替えたことで、表紙のバクラムもあまり古さを感じない印象になりました。将来はフィンランド大使館への寄贈の可能性もあるということ、フィンランドのことなど、興味深いお話の数々も伺いました。記録の公開にご快諾をいただきましたことを、ご依頼主に感謝いたします
修復、改装:平まどか タイトル押し、金箔装飾:近藤理恵
お二人ともお元気そうでなによりです
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