2023年4月20日木曜日

修復報告展と講座

日比谷図書文化館でメンバーが携わった修復の展示が始まっています。
新緑の美しい日比谷公園にある図書館、お時間がございましたらぜひご覧ください。


修復前の状態、綴じ割れ

修復後の3冊(担当:近藤)


特別研究室企画展示 
100年後も手に取れる本に 内田嘉吉文庫修復報告2023

2023年4月18日(火)~6月18日(日)

平日:10:00−20:00、土曜日 10:00−18:00、日・祝日 10:00−16:00

2022年度、日比谷図書文化館特別研究室は内田嘉吉文庫をはじめとする17点の所蔵資料の修復を行いました。昨年開業150周年を迎えた日本鉄道史関連本や美しい図版が収められた大型の洋書、関東大震災の記録など様々な種類の資料が安心して手に取れるよう修復されました。書籍修復家による創意工夫を凝らした修復過程の記録を公開し、修復された資料を展示します。(図書館HPより)

4階 特別研究室

日比谷図書文化館
東京都千代田区日比谷公園1-4


企画展示関連講座 資料を活用するための修復―合冊製本から分冊製本へ―

2023年6月17日(土)14:00~15:30

講師:近藤 理恵(製本・書籍修復家)

雑誌や書籍を一冊にまとめて資料を保存する「合冊製本」。特別研究室所蔵資料の中にもこの方法で保存されてきた資料が多数あります。しかし、合冊製本の資料は開きにくい、かなりの重量があるなど、必ずしも扱いやすいものではありませんでした。そこで、特別研究室では2020年度より合冊製本を「分冊製本」に戻す修復を試みています。本講座では特別研究室所蔵資料の分冊製本による修復を手がけた講師が、より扱いやすく、活用しやすくするための修復の作業過程とその意義についてお話しします。(図書館HPより)

会場:スタジオプラス(4階 小ホール)
参加費:1000円
申し込みフォームより事前申込、定員60名

申込詳細 

日比谷図書文化館
東京都千代田区日比谷公園1-4
https://www.library.chiyoda.tokyo.jp/



2023年4月13日木曜日

聖書の修復

聖書の修復

 聖書の修復をお引き受けした。破損状況としては、最初と最後のページが本体から離れ、表紙の側についた状態であったことと、綴じは概ね良好だったが、若干ゆるみが見られることがあった。これからも永きにわたり読み続けられるよう、必要と思うことはしてほしいというご依頼主のご希望だったので、解体して再製本をすることにした。 

 

修復前の表装材の様子

本文ページのしわ折れ

 付箋が20か所以上にわたり貼られていた。粘着部分が将来、ページにシミをつくる恐れがあることをご説明し、了解を得て付箋を取り外し、粘着部分に和紙を貼り、元のページに戻すことにした。 

付箋のページ

 本体を折丁ごとに解体後、表装材についているページを外し、しわ折れを直してから、最初と最後の折丁に組み立て直した。他の折丁もノドの傷みがあるものを修復した。
支持体を使った本かがりの後、背固めを行った。表紙と同じ山羊革で作った花切れを貼り付け、絹糸で本体に綴付けた。クータ(背の補強のための、チューブ状にした紙)を背に貼り付け、本体作業を完了。

 

花ぎれ綴付け

 厚手の紙で表紙芯材を作り、革の切り出しをした。革漉き後、芯材に表紙貼り。
背に「聖書」と金箔押しをした後、本体に表紙を取り付けた(背、見返し貼り)。
中性紙による保護ジャケットを作成した。

 

作業終了後

表紙

 

                        ******

ご依頼主からは、「別物のように美しく仕上げていただいた」というお言葉をいただきました。深い想いが感じられる聖書の修復にかかわることができ、気持ちよく仕事ができましたことを、ご依頼主様に心より感謝いたします。

 

修復、製本、タイトル押し: 平まどか